あるところに、「中西さん」と「日東さん」がいました。
日)中西さん、これ何の木だろうね?
中)さあ?何の木だろうね・・・植物学者じゃないから分からないよ。
日)いつからここにあったんだろうね?
中)さあ、前からあることは、気がついていたけど、いつからだろうね・・・。
日)じゃあ、おたくの木じゃないってこと?
中)うちのじゃないね。
日)じゃあ、うちで育てるけどいいかい。
中)どうぞ、うちには、立派な桃の木や、梅の木がたくさんあるから、興味ないね。
・・・

中)日東さん、ずいぶん立派な木に育ったね。
日)そうですよ、枝葉を剪定して、実に養分が集中するようにしたり、防虫のむしろをかけたり。
中)ところで、何の木だね。
日)聞くところによるとリンゴ(小苹果)のようですね。
中)リンゴ(小苹果)かい?じゃあ、ずーっと昔、私が、ここで食べたリンゴの芯の部分を捨てたものが、育って大きくなったのかもしれないな。
日)と、おっしゃいますと?
中)何年も前だけど、リンゴを食べて、芯をここに、ぽいっと捨てた記憶があるんだよ。
日)だから、最初に尋ねたじゃないですか!
中)最初って?
日)あの時、植物学者じゃないから分からないって言ったじゃないですか。
中)植物学者じゃないから、私の木じゃないってのは、三段論法にもないし、
それに、あんたは、リンゴだって分かってたのかい?
日)分かってなかったけど、育てたのは、私ですよ。
中)だけど、種は、私のだよ。
日)ちょっと待ってくださいよ。あなたの種だって言う証拠はあるんですか?
中)だから、昔、ここで、リンゴの芯を捨てたんだよ。
日)そんなの誰も見ていなかったんでしょ。
中)だれも見ていないからポイ捨てっていうんだよ。
日)じゃあ、証拠は無いんですね。
中)じゃあ、聞くけど、あんたが植えたのかい?
日)私が植えたわけではないけど、育てたのは私ですよ。
中)育てただけで、私のだって言うのは、無理があるでしょ。第一私の家の目と鼻の先だよこの場所は。
日)ここは、あなたの土地なの?
中)じゃあ、あなたの土地なの?
日)質問に質問しないでくださいよ。土地は、ともかくこの木は、私が育てたんだ。
中)あんたもしつこいね。私の種だよ。
日)証拠はないでしょ?
中)ちょっと待って、まさか台さんの土地じゃないよね。
日)ちょっと待って、やぶへびになるからやめましょう。あの人を巻き込むのは。
台)やあ、おふた方、こんなところで、何の話ですか?我が家まで聞こえてきますよ。近いから。
中)いやあ、何でもありませんよ。
台)なんだか、リンゴがどうしたとか言ってましたね。まあ、ずいぶん立派なリンゴに実りましたね。
日)ええ、私が、丹精こめて育てたんです。
台)いやあ、申し訳ないねえ。ここは、うちの地所なんだよ。
中)え?
日)え?
台)そりゃあそうだろ。あんたらの話が聞こえるほど近いんだから。
中)ここは、誰の土地でもないはずだ。
日)いまのは、言質をとりますよ。
中)だって、オヤジのオヤジのオヤジのオヤジのもっと昔から言い伝わってきているんだ。
台)そんなことはない。
日)あんたの土地だって証拠はあるのかい?
台)あんたは、二言目には証拠は?って聞くけどあんたこそ証拠はあるのかい?
日)なんたって、育てたのは私だから。
中)育てたかもしれないが、わたしが、リンゴの芯を捨てなければ、木そのものが無かったんだよ。
台)私の土地で、勝手に木を植えたり、育てたりしたらまずいでしょ。
日)あんたの土地という証拠も無いのに、近いだけじゃ理屈に合わないでしょ。
・・・・・・・・・永遠と続く

小苹果